EGS型地熱開発に向けた,岩石き裂のせん断滑りにともなう透水性変化挙動の解明

石橋琢也
(特定国立研究開発法人産業技術総合研究所
福島再生可能エネルギー研究所 研究員)

2017年9月24日日曜日

岩石実験は面白い②

7月,8月は自身のパーマネント審査があり,その準備に追われておりました。
結果はまだ出ていないのですが,無事に発表を終えることが出来ました。
この間,研究はほとんど進まず,また論文のリバイズや10月の学会シーズンに向けた
準備等やることが目白押しな状況ですが,一つずつ着実にこなしていこうと思います。

そんなわけで,前回の最後で書きましたように,今回は岩石実験をする意義について
私なりの考えを紹介させていただきます。
私の考えとして,岩石実験を実施する理由は以下の通りです。

・ 地下の現象をシミュレーションする際,シミュレーションの不確実性を減らすため
  の基礎物性,基礎現象を提供する。
・ 地下では応力,温度,流体の存在を我々が制御するのは困難であり,そのような状況
  での観測には不確実性が多い一方,室内実験では各パラメータを制御可能であり,
  したがって生じた現象が本当かどうかを検証できる。
・ 室内実験で適用できる計測技術の開発は,将来的に現場での計測に生かせる可能性
  がある。

室内実験での結果をフィールド実験の解釈等に当てはめる際,一番大きな問題となるのは
スケールの違いです。ラボで用いるサンプルはせいぜい10cm程度である一方,貯留層や
実際の断層は数百メートルから数キロにもなります。このスケールアップについて以下に適切に議論するかというのが実験屋の腕の見せどころになります。

次回は,岩石実験をどのように行うか,岩石実験で重要な点を紹介したいと思います。


2017年6月26日月曜日

岩石変形実験は面白い①

私の専門は,岩石内の流体の移動現象です。
特に,割れ目(亀裂)中の流体流動移動現象に興味があり,この
現象に関わる種々の現象の理解を深めるために,実際の岩石サンプル
を使用した岩石実験を実施します。
このブログでは,読者の方に「岩石変形実験とはなんぞや,なんとため
にそんな実験をやる必要があるか?」を多少なりとも理解してもらうため,
少しずつですが実験のポイントであったり,意義,そしてどんなところに
楽しさや難しさがあるのかを紹介していきたいと思います。
そのなかで,たまには研究の進捗状況や最新の成果にも触れていきたいと
考えます。

まず,岩石変形実験を実施する意義を簡単に説明したいのですが,そのため
には「地熱発電」についての知識が少し必要です。
そこで,まずは「地熱発電」について簡単に紹介したいと思います。

地熱発電というのは文字どおり「地球の熱を利用した発電」です。
地表からだんだん深くなるにつれて地面の温度は上昇していき,地下数キロ
では,その温度が数百度に達することがあります。このような温度環境下にある
水は水蒸気となっており,この水蒸気を地上に取り出しタービンを回してやろう
というのが地熱発電です(ざっくりとした説明ですので,詳細は専門書や
インターネットの解説を参考にしてください)。
地熱発電を成功させるにあたっては,地下の熱,流体(水蒸気),そして流体の
通り道である岩石の割れ目の存在が必須条件となります。
すなわち,地下の熱で温められた流体(水蒸気)が岩石の割れ目を通って循環
して地上に組み上げられタービンを回すということです。

このようなシステムを適切にシミュレーションし,地熱発電所の生産可能性や
持続可能性等を評価するにあたっては,流体の通り道である「岩石部」の特性が
非常に重要となります。地熱発電所の能力が岩石部の特性に支配されるといって
も過言ではありません。
そんなわけで,この岩石部の特性を十分すぎるほど理解してやる必要があります。
(なんとなく,岩石変形実験につながる兆しがみえてきたでしょうか?)

次回は,上述で述べた「岩石変形実験を実施する意義」を説明したいと思います。